連載企画:Wi-Fi領域に潜む脅威と対策 <第20回:従来のASMでは見えない「Wi-Fi」という攻撃面>

 近年、企業のサイバーセキュリティ対策として「ASM(Attack Surface Management)」が注目されています。ASMは、攻撃者から狙われる可能性のあるIT資産や脆弱性を継続的に把握・管理する考え方ですが、一般的なASMでは、IPアドレスやDNS、公開ポート、Webサービスなど、主にOSI参照モデルの第3層(ネットワーク層)以上の領域を対象としているケースが多く見られます。しかし、企業ネットワークへの侵入口という観点では、第3層以上だけを監視していれば十分とは言えません。特に見落とされやすいのが、Wi-Fiによって形成される第1層(物理層)・第2層(データリンク層)です。

 Wi-Fiは単なる「IPアドレスを持った機器」ではありません。有線LANがUTPケーブルとEthernetによってネットワークへの接続経路を提供しているのと同様に、Wi-Fiも電波とIEEE 802.11によってネットワークへの接続経路を提供しています。つまり、攻撃者が不正なアクセスポイントや端末を利用してこの領域を突破すれば、IPアドレスや公開ポートを外部から攻撃することなく、組織内部のネットワークに接触できる可能性があります。さらにWi-Fiには、有線LANにはない大きな特徴があります。それは「電波が建物の壁や敷地境界を越えて届く」という点です。有線LANへ物理的に接続するには、通常は建物内に入り、LANポートやネットワーク機器などへアクセスする必要があります。一方、Wi-Fiでは電波が届く場所であれば、攻撃者が建物内部へ侵入することなく無線ネットワークへ接触できる可能性があります。また、Rogue AP、Evil Twin(なりすましAP)、Wi-Fi Direct、スマートフォンのテザリングなど、管理者が想定していない無線接続経路が形成されることもあります。これらはIPアドレスや公開ポートを中心に監視する従来型のASMでは十分に把握できない可能性があります。

 Attack Surfaceとは、本来「IPアドレスを持つ資産」だけではなく、「攻撃者が接触し、悪用できる可能性のある面」全体として考える必要があります。したがって、インターネットから見えるIPアドレスやWebサービスだけでなく、建物の周囲に広がるWi-Fiの電波空間もAttack Surfaceの一部として捉えることが重要です。これからのASMでは、第1層・第2層まで対象を広げ、「どのような無線機器が存在しているのか」「管理者が把握していない無線接続経路が作られていないか」といったWi-Fi領域についても継続的に把握することが求められます。
 「WiSAS」は、Wi-Fi空間を24時間365日継続的に監視し、周囲に存在するアクセスポイントや無線端末、無線通信の変化を記録・可視化します。従来のASMでは把握しにくかった、第1層・第2層の無線領域を監視することで、IPレベルだけでは見えないAttack Surfaceを補完し、より包括的なサイバーセキュリティ対策を支援します。

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